戦略経営論 4492531459 東洋経済新報社
■Amazonエディターレビュー アメリカのビジネススクールには戦略に関する授業が用意され、経営学修士(MBA)コースの目玉になっている。いわゆる「戦略経営論」(ストラテジック・マネジメント)である。本書はスタンフォード大学ビジネススクールで、その「戦略経営論」を教えている3人の教師が、授業用に用意した講義ノートをまとめたものだ。 特徴としては、何よりもまず内容の包括性である。取り上げているトピックが網羅的なため、訳書で500ページを超える大部の本になっている。第2に、需要サイドの収穫逓増市場に焦点を当てた第12章など、新味のある説明が盛り込まれている。付録に添付されている「ゲーム論」の戦略論への応用に関するノートも有用だ。第3に、分析ツールの細かな手法論には立ち入らずに、「戦略的に考える思考法」を強調している点も特徴といえる。第4に、議論の基盤がはっきりしており、ミクロ経済学、特に産業組織論と組織論の研究の2つが理論的基盤となっている。この点はハーバード大学とは違い、理論志向を強くもったスタンフォードの教師らしい。第5に、事例が豊富であり、特にパソコンのデルやコンパック、全米を代表する本屋のボーダーズ、航空業界トップのサウスウエスト航空などがおもしろい。日本企業についての分析もある。 以上のとおりだが、その特徴は弱みにも通じる。取り上げているトピックがあまりに広範なせいか、記述の内容が総じて常識的で、単純で、議論が平板に見える。また、経営戦略の最新の手法や関連コンセプトに関心がある向きには、不満が残る内容だろう。 ビジネススクールの教室では、教師よりも学生が主役だ。彼らのディスカッションは刺激的で、それに比べると教師のレクチャーはしばしば添え物のように見える。その添え物だけを束ねたような印象が残る。(榊原清則) |