情報文明の日本モデル―TRONが拓く次世代IT戦略 4569618499 PHP研究所
■Amazonエディターレビュー 2001年のネットバブル崩壊とドットコム企業の不振は、IT革命が新たな局面を迎えていることを私たちに伝えている。にもかかわらず日本では、グローバルスタンダードという名のアメリカ型ITモデルが、いまだに信奉されている。そのような状況に警鐘を鳴らし、日本独自のITモデルの構築と将来の方向性を提言するのが、本書である。 著者は、日本独自のコンピュータ体系であるTRONの提唱者として、その名を知られた坂村健氏である。本書でも、ポストPC時代のコンピュータ体系としてTRONが語られており、TRONのコンセプトやその歩みを知ることができる。現在脚光を浴びているオープンアーキテクチャーや、ユビキタスコンピューティングの概念を先取りしていたその先進性には、誰もが驚かされるであろう。また、どのような少数言語にも対応できる日本発のOSである「超漢字」についても紹介されている。Windowsをはじめとするアメリカ製OSがコンピューティング環境を席巻するいまだからこそ、本書によって、TRONを再認識する機会が与えられることを期待したい。 IT分野における戦略について語ろうとするとき、どうしても「ビジネスの成功」という側面がクローズアップされがちである。しかし、本書の根底には、約20年にわたりTRONプロジェクトを先導してきた著者の、文化の多様性を尊ぶ精神と、アジア的多文字言語文化の発信基地としての日本をつくるという、高い理想が流れている。(福島紀行) |